IVORY

Fictions

隅の方

多分、そんな意識することでもないけど、部屋の隅の方に気が溜まっているような気がしていて、寝て起きてふと目をやると、隅の方に「あ、気が溜まってるな」と思う。 その気が何なのかとかあまり深く考えたことはない。自分の中から漏れ出したものなんだろう…

大丈夫

裕美が泣いている。 真夜中の午前三時、裕美の泣き声で僕は目を覚ます。加那子はどこだろうと暗闇で気配を探るが、この部屋にはいない。また泣いてるんだろうと僕はいったん加那子のことは脇に追いやる。 裕美の泣き声が激しくなってきたので、ティファール…

タスク

ディスプレイに亀裂が走ったように思えた。しかしそれは私の勘違いで、視界がきらきらと光って、あまりの明るさにきちんと物事が見えなくなってしまったのだった。そうであるだけで、特に実害もない。ディスプレイに恐る恐る触れてみると、かすかに暖かさを…

小銃の行方

詰問の声には慣れていた。やってもいないことをやったことにされ、恫喝なのか命令なのか分からない高圧的な声によって、わたしは決定された。 ここでは上官の思惑が何にも勝った。死ぬか、殺されるか。選択は意味をなさない。その二択の行き着く先は同じだ。…